こんいろのブログ

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

ハロパネラ 朋子

<span class="deco" style="font-weight:bold;">吸血鬼ハロパネラ</span>


朋子は紗友希と共に事務所へ向かっていた、遅れたのでタクシーに乗った。
「運転手さん急いでください」タクシーは速度を上げた、
前の車が遅いので運転手は焦り追い越そうと対向車線に入った時、
目の前にトラックが迫って来た。衝突の瞬間 朋子はとっさに
紗友希に覆いかぶさり庇った。


現場に到着した救急隊員が見たのは、トラックと電柱に挟まれ
原型をとどめないほどひしゃげたタクシーの姿だった。
運転手は 人間の形を成してない状態で、後部座席の二人は抱き合ったまま
車体に挟まれていた。隊員は首を振り
「レスキューを呼べ!俺達じゃあどうにもならない」


朋子は車体に挟まれて身動き出来ないが紗友希を見ると、
紗友希は鼻や口だけでなく目や耳からも出血していた。
朋子はなんとか紗友希の首に口を当てるとある事をした。
レスキューが到着して二人を救出するのに長い時間が 掛かった。
ようやく二人は病院に運ばれた。


運ばれて来た二人を診た医師は首を振った。脳挫傷全身骨折
すべての内臓が破裂し心肺停止で、手の施しようが無かった。
このまま遺体安置所に送られても不思議なかった。
翌朝、医者は耳を疑った。看護師が一人の意識が戻ったと 報告したのだ。
「馬鹿な!あんな状態で生きてるはずがない」

 

見に行くと本当に二人とも生きていた。まだ顔は青黒く腫れていたが
一人は声を掛けると返事をした。もう一人は意識は無いものの、脈があった。
一週間後、看護師が二人が退院したと報告した。
一人はまだ起き上がれないが、一人は歩いていると言う。
医師は信じられなかった。



「それが本当なら、あの二人の女の子は人間じゃない。化け物だ!
来た時はゾンビより酷い状態なのが、たった一週間で回復するなんてありえない」
二人は逃げるように退院して行ったと言う。
医師はある小説を思い出した。狼男の話で瀕死の状態の人間に
狼男は自分の血を輸血して蘇生させるのだ。

 

中世ならいざ知らずこの現代に、狼男とかドラキュラとかの妖怪が
存在するとは思えない、小説の上での話しでしかないはずだ。
二人の女の子の名前も住所も架空のもので素性はわからない。
ただ看護師はテレビで見た顔だという。 朋子は狼人間ではない。
しいて言えば吸血鬼なのかもしれない。


意識を取り戻した紗友希は側の 朋子に、「 朋子が私を助けてくれたのね」
「そうよ」 「私、死んでたの?」
「そうね。ほとんど死にかけてたわ。たとえ私の正体が知れても
紗友希を死なせない為に息のある内にあれしか方法が無かったの」
「どんな?」「首を触って」触ると傷があった。
「あなたの首を噛んだの」「私の血を吸ったの?」

 

朋子は首を振った、「逆よ。紗友希に私の血を吹き込んだの」
「その血が私を助けたの?」「そう。詳しくは言えないけど私の血があなたの
体の損傷を急激に回復させたの」 「そうなの。 朋子は一体何なの?」
朋子は微笑むと、 「私はハロパネラよ。言うなれば吸血鬼みたいなものね」


紗友希は首をかしげて、「じゃあ 朋子に噛まれた私も吸血鬼になるの?」
朋子は笑って「ならないわ。あなたをハロパネラにするにはもっと
エナジーを送り込まないといけないの。血だけではだめなの」
「そうか。質問していい?」「どうぞ」
「なぜ、ハロパネラがアイドルになったの」


「それはアイドルになりたい吸血鬼がいてもいいじゃない」
「そうなんだ。私の命を助けてくれて本当にありがとう」 朋子はうなずくと
「お願いだからこの事は誰にも言わないで」
「わかった。死んでも言わない」 朋子は笑って、
「紗友希はもう死なないわ」後に紗友希はその意味を知る事になる

 

「わかった。でもそうすると 朋子も不死身って事になるわね。
いったい 朋子は今何歳なの?」
「そうね。私は西暦で言うと、237年生まれなの」
「237年?」
「そうよ、だから今年2014年だから、私は1777歳って事になるわね」
「はぁあああああああ?!、せん、<span class="deco" style="font-weight:bold;">千七百七十七歳</span>なのお〜〜」


「紗友希は、卑弥呼って知ってるでしょ、日本史で習ったでしょ」
「まさか、 朋子は卑弥呼だなんて言うの?!」
「残念ながら違うわ。でも卑弥呼は私の伯母なの。私は卑弥呼
姪になるの。台模(とも)という名前よ。卑弥呼の後を継いで
邪馬台国の女王になったの」
「へぇえええ、あれ?私は歴史は好きだけど、邪馬台国卑弥呼の後の女王は、
確か、台与(とよ)って言うんじゃなかった?」


「それは1800年近く昔だから、いつのまにか間違って伝わったのよ」
「でも学校で習ったのは・・・」
「はぁあああ、なんか文句があるのぉお?!」
「いやいやいや、無いです!と、台模ですね」
「もちろんよ」

 

「でも、その邪馬台国の女王の・・」
「台模」
「その台模が、なんで吸血鬼になったわけ?」
「それは、未来からタイムマシーンでやって来た吸血鬼、ハロパネラ達
によってエナジーを吹き込まれて、その時18歳の私は
不老不死のハロパネラとなったわけなの。わかる?」


「う、うん、なんとなくわかるような・・・」
「だから私は、実際の年齢は1777歳だけど体は18歳で止まってしまって、
永久に18歳のままなのよ」
「うらやましい」

 


 

<span class="deco" style="font-weight:bold;">ハロパネラ 朋子 凶器の自転車</span>

朋子と紗友希が歩道を歩いていると、後ろからシャーッと
音を立ててスポーツタイプの自転車が迫って来た、
二人が避けると狭い歩道を自転車はすり抜けて行った、
触れるほどの近さだった、 前方を見ると親子連れが歩いていて、
紗友希が危ないと思った瞬間、自転車が子供に激しく接触した


4、5歳くらいの女の子が飛ばされて転倒した、自転車に乗っていた少年は
ちらっと後ろを見ただけで速度を上げて去って行った。
二人が女の子の側に駆け寄ると、女の子は顔面蒼白で、
すでに白目を剥いていた。頭を強打したに違いなかった。
若い母親は半狂乱であわてふためくだけだった、

 

朋子は女の子を膝に抱き起こしながら「紗友希!救急車呼んで」
何とか紗友希が携帯で救急に連絡して 朋子に近づくと、
朋子は女の子の額を手でさすっていた、側で母親が子供の名前を 泣き叫んでいた、
「紗友希、うるさいから母親をあっちへやって」
紗友希が母親を抱えて連れて行く


朋子が抱えた子供の額さすり続けているうちに、
遠くでサイレンの音が聞こえてくる、突然子供が泣き出した。
紗友希と母親が近くへ行くと、子供の顔に赤みが戻り泣き声を上げている。
泣き出したという事は元気を取り戻したという事だ。
二人は子供と母親を乗せた救急車を見送った。


紗友希は、また私の時のように 朋子はあの子供に何かをしたのだと思った。
「さて、ではあの逃げた男の子を捜しに行くわ」
「はああ?捜すってどうやって?もうどっかへ逃げて行って 捜しようがないわ」
「大丈夫、私は鼻が利くの。特にあの自転車の匂いを憶えてるわ」

 

紗友希は「ねえ、そういうのは警察にまかせて会社に行かないと」
「まだ時間はあるわ、私はね子供を轢いたとわかって逃げた人を許せないの。
紗友希は先に行ってて」紗友希は迷ったが、 朋子の後を追った。
「ねえあの子に何をしたの?額をさすってたけど、それで治したの?」


「何もしてないわ。ただ人間の治癒力を少し増幅して上げただけよ」
「そうなんだ」やがて住宅街の大きな屋敷の前で 朋子は止まった。
「あの自転車の匂いが強いわ。あの人はここの家の住人ね」
まるで警察犬並の鼻ねと紗友希はつぶやいた、「何か言った?」
あわてて紗友希は首を振った。



「隠れて!帰って来たわ」そっと見ると、あのスポーツタイプの
自転車に乗った少年がやって来た、しきりに辺りを窺いながら。
りっぱな門の前に止まると降りて中に入ろうとした時、
すうと 朋子は歩いて行った。「待ちなさい」ぎくっと少年は振り返った。
「あなた子供を轢いたでしょ」単刀直入に言う。


最初茫然としていた15歳くらいの少年は、すぐに「知らん!」
首を強く振った。「とぼけても無駄よ。私はちゃんと見てたのよ、
あなたが子供を轢くのを」少年の表情が変わる。
「うるさい!俺は知らない!」「あの子は死んでたかもしれないわ。
あなたは、まずあの親子に謝ることね」


少年はポケットから折りたたみ式のナイフを取り出した。
「うるさい!帰れ!行かないと怪我をするぞ!」
ギラリと光るナイフを振りかざす。その時紗友希は 朋子の瞳もギラリと
光ったような気がした。
「そうやって親や世間に甘え、言う事を聞かせるために暴力を振るって来たのね。
もう止める事ね」

 


少年が喚き声上げて 朋子にナイフを向けて襲い掛かろうとした瞬間、
紗友希は危ない!と思った。もちろん少年が。
まるで天から雷が落ちたような雷鳴が轟くと、
朋子が片手を前に突き出して、少年が数メートルは吹き飛ばされるのが見えた。
少年は門の前に叩きつけられると口から泡を吹いている。


朋子は近寄ると、その首に顔を寄せてある事をした。
「紗友希、呼び鈴を押して」震えていた紗友希は我に返って
言われるままに呼び鈴を押した。「では帰るわ」
「な、なな、何をしたの!あの人に」「落ち着きなさいよ。
すぐに家の人が出て来てあの人を入れるわ」
「だ、だから何をしたの!」


紗友希は振り返ると、少年がぴくりとも動かないが眼を開けてるのを見た。
足早に歩く 朋子を追いかける。紗友希を見た 朋子は、
「あの人にちょっとした毒を吹き込んでやったの」
「それであの人は死ぬの?」「死なないわ。でも全身が麻痺して
一月ほど まったく動けなくなるの」


「でも眼は見え耳は聞こえるけど、口はきけないわけ。
そうやって一ヶ月間すごせば、あの人もこれまでの自分を反省するのに
ちょうどいい時間よ。あの様子じゃこれまで散々悪い事をやってきたわけだから」
「そこまでしないで警察に言ったほうが」
「警察?そうね、それも方法だけど」


「警察で目撃者の私達は、長い時間調書を取られて、
あの人と親が呼び出され、でも未成年だから、あの女の子が どうなろうとも、
お金を賠償して結局は説諭されただけで 帰されるのよ。
そして反省も無く、また同じ事を繰り返すのよ。
その連鎖を断ち切らないと解決は出来ないわ」


「紗友希だって、宿題もしない、家の手伝いもしないで 遊んでばかりいて、
親に叱られたぐらいで反省して すぐに言う事を聴く様になると思う?」
「ならないと思う」 「でしょう。それと同じよ」
でも、宿題や手伝いをしないくらいで、一ヶ月も 全身が麻痺するのは、
わりに合わないと紗友希は思った。