こんいろのブログ

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

ハロプロ研修生発表会

あやみっくワールド 二人の松浦亜弥

 302 名前:ナビが壊れた王女様 投稿日:2004/03/12(金) 00:27

 

ママはタクシーから降りると、

バックからチケットを取り出した。

それを亜弥に渡した。

見るとそれは今日の松浦の公演のNHKホールの

チケットだった。

 

「実は、マネージャーさんから亜弥には内緒で

今日のライブのチケットを頂いていたの。
でも、私が行くよりあなたが観に行った方が良い
ような気がするの」

「そんな・・・せっかくの機会なんだし、
ママのほうこそ、観に行って上げてください」

「いいえ、あなたが観に行くべきよ。
亜弥は、ライブの仕事が一番大好きだって
言ってたわ。あなたもそうでしょ」

「はい。大好きです」


「以前亜弥が話してくれたの。ライブの舞台で歌うのは

大好きだけど、客席でライブを観るのも大好きだから、

あるアイドルのライブを是非客席で観たいと。

それが夢だと言うのよ。

誰かと聞いたら、

松浦亜弥のライブを客席で観たい。と言い出したの」

松浦は、自分自身のライブを客席で観たい。

その気持ちはわかるような気がすると亜弥は思う。

 

「亜弥ちゃん、あなたも自分のライブを生で客席から

観たいと思った事があるかしら」

亜弥はうなずいて、

「はい。あります」

ママもうなずくと、

「自分自身のライブを客席で観た人なんて誰も

いるはずが無いわね。

でも、あなたならそれが実現出来るのよ。

舞台の上で歌うのは松浦亜弥。客席でそれを観るのも

松浦亜弥なのよ。

自分のライブを観たいと言う夢を、あなたなら

かなえられるのよ」

 

亜弥は思い浮かべた。舞台で歌う松浦を自分、亜弥が

観ている情景を。現実ではあり得ない事を。

 

「こんな機会は一生無いわ。このライブを観ることは

アーティストしてのあなたの将来のためになるわ。

ぜひ、観るべきよ。さあそのチケットを持って会場へ
行きなさい」

亜弥は顔を輝かせて深く頭を下げて、
「はい!行きます」

ママは笑顔で、
「早く行きなさい。私は渋谷の街でショッピングを
楽しんでるから大丈夫」

「はい。ありがとうございます。

あ、あのお願いがあるんです。帽子を買って

いただけますか?このまま会場へ入ったら

私が松浦亜弥だとわかると面倒な事になります。

帽子で顔を隠さないと」

 

それで近くの洋品店に入って、あまり目立たない

キャップを買って貰う。それを深く被って行かないと。

 

亜弥はママにせかされて、NHKホールに向かった。

ドキドキしながら会場に入った。

生まれて初めて、生の松浦亜弥のコンサートを
客席で観ることになるのだから・・・。

 

席の場所を見に行くと、すこし右端の席だったが、

最前列だった。

開演まで少し時間があったのでホールを見てまわる。

 

ホールには大勢のファンで混みあっていた。

グッズ売り場に行列が出来ている。

ある事が気になった。それは、

女の子が圧倒的に多い。七割、いや八割以上が

女性のファンばかりなのだ。

男性は、ちらほらとしか見当たらない。
この世界のコンサートはみんなこうなのだろうか、
なんだか、違和感を感じてしまう。

 

すると、小さな男の子を見つけた。

なんだか嬉しくなって思わず声をかけたくなった。

その男の子の前にかがむと言う。

「ねえ、松浦亜弥ちゃんは好き?」

「うん。好きだよ~!」

男の子は元気よく言った。

すぐ、母親らしい女性が近づいたので、その場を
離れた。

男の子がママに言う。

「あのお姉ちゃん、あややだよ~」

離れて行く亜弥を指差している。

「なにを馬鹿な事を言ってるの、もう開演なのに
こんなところにあややが居るわけないでしょ!

あややに似てる女の子よ」

松浦亜弥のCDやDVDを売っている。

ちょっと覗いて見て、思わずそのCDを手に取った。

「GOOD BYE 〝夏子〟」というタイトルの

シングルがあった。

自分のいた世界では、〝夏男〟だった。

「ナビが壊れた王子様」という曲があったけど、
もしかして〝王女様〟になってるかも。

その曲はアルバムに入っているので、そのアルバムが

あったので曲目を見ると、

「ナビが壊れた王女様」となっていた。

 

もうすぐ開演のアナウンスがあったので、場内に入る。

見ると一階席の後方の一角に、まるで隔離された
ように、男の子だけの集団がいた。

それを見て思わず、手を振ってしまう。
男の子のみんな、頑張って~!


その男の子のひとりが言った。

「あれ~!今、手を振った女の子松浦じゃないのか!」

「ボケ~!なんで、松浦が客席にいるんだよ!」


 
右端の最前列の席につく。
隣は、高校生ぐらいの女の子だった。

亜弥には目もくれなかったが、キャップを深く
かぶり直す。

最前列の席は全員女の子だった。

ちらっと後ろを見たが全部女の子達だった。

開演のアナウンスがあって、

 場内が暗くなった。

女の子達の大歓声が上がり、いよいよ開演となる。



ファンが総立ちになる中、スポットライトに
浮かび上がって亜弥が登場する。


『もったいぶらない DESTINY
たった10分足らずで
奇跡の恋となる~♪』

いきなりのロックな感じの軽快な曲に場内の
ボルテージも一気に上がる。

亜弥の衣装のボルテージも急上昇!
前に大きな切込みの入ったミニスカート。

『止まらない それは もうどこにも行かない
OH YEAH! VERY PRETTY DANCE
OH YEAH! VERY PRETTY DANCE♪』

この曲は、足を高く蹴り上げる振りがある。

亜弥が、思い切り高く足を蹴上げる!
最前列の私の席から、スカートの中が見えた。

中に、ショーパンを着けていない・・・

どうやら自前の下着だけらしい。

 

会場の女の子達の嬌声ともつかない叫びが
響きわたる。


『Thank You~!』


2曲終って、最初のMC。

「東京のみなさ~ん!やってまいりました!
松浦亜弥ゃ~~~で~す!!

コンサートツアー2004春、
~私と私とあなた~始まります~!!」

女の子達も大歓声で答える。

「1階席のみなさ~ん、こんにちは~!
 2階席のみんなも、こんにちは~!
 3階席のみなさんも、こんにちは~!

 張り切って行きましょう~~!!」

と、定番のあおりを叫ぶ。


次は、新曲だった。

312 名前:奇跡の香りダンス 投稿日:2004/03/17(水) 18:41

 

今日の朝、松浦は不安を口にしていた。

出だしは、なんとか持ちこたえていた、

その時だった、突然右前部のドアが開いた。
そのドアから灯りが漏れた。誰かが入って来る。

亜弥は思わずそちらに眼が行った。

すぐ舞台を見ると、松浦も一瞬ドアの方を見ていた、

その事が松浦の気をそらしてしまったようだった。


松浦は、歌が途切れてしまって、舞台で棒立ちに
なってしまう、歌詞と振りが飛んでしまったのだ、

松浦亜弥のライブでは、たまに歌詞が飛んでしまう

事があって本人も自覚していて、ファンも承知して

歌詞が飛んだ時、ファンの中には歌詞と振りを完コピ

しているファンが何人もいて、すかさずその部分の

歌詞を大声で歌って松浦らに教えて助ける事がある。

 

しかし、今回のようにこの新曲が初披露の場合は、

まだCDも出て無いしメディアにも公開されていない

ので、ファンはまだ誰も歌詞や振りを知らないので、

助けようが無い。

ファンは騒然となり、あちこちで悲鳴にも似た声が
上がり、亜弥ちゃん頑張ってーーー!?と懸命に

声援するものの、どうしようも無かった。

しかし、この会場の三千人余りのファンの中に

唯一人だけ歌詞と振りを完璧に知っている人物が

いた。それは亜弥だった。

亜弥は、いても立っても入られなくなり、
無我夢中で大声を張り上げ、新曲を歌い、振りを
踊った。 

すぐ近くの舞台には大音量のアンプがあり、亜弥の

声が搔き消されるほどの音量だったが、

それでも亜弥は喉が張り裂けるばかりに歌詞を叫び

振りを踊った。

松浦!わたしの振りを見て!わたしの歌う歌詞を

聞いて!

 

そんな亜弥を同列や後ろのファンの女の子達は

不思議そうに見ている。

まさか、そのキャップを深く被った女の子が

もう一人の松浦亜弥だと誰も思わなかった。

 

舞台の松浦は、ついには泣きそうな顔で視線を
およがしていたが、ふらふらと上手の亜弥の

座席の方に何かに導かれるように近づいて来る。 

 

それを見た亜弥は、顔を見られるのもかまわずに

キャップを手に取り大きく振り回した。

松浦!亜弥はここに居るよー!

 

松浦は、亜弥の姿に気がついた。

松浦の表情が、パッと輝いた。

私達はステージの上と下で一瞬見つめ合った。

松浦は自分を取り戻し、私と一緒に歌い、踊った。 

松浦は、中央に戻るとこぶしを突き上げ、
足を大きく蹴り上げて、激しくリズムをきざみ、
歌い、踊った。

そして、無事に歌い切った。

 

ファンの大歓声と拍手が鳴り止まなかった。

そして、亜弥の同列と後ろの列の女の子達が、

何人も一斉に亜弥に向かって拍手を送って、

松浦のピンチを救った亜弥を称えた。

 

 亜弥は何だか急に恥ずかしくなり座り込んでしまう。

キャップを深くかぶり、うつむいた。

でも、まわりの皆の拍手がすごく嬉しかった。

 

 それからは、松浦は明らかに立ち位置を無視して、
亜弥の近くにやって来て、亜弥を見つめながら歌う。


『あなたの彼女だと言いたいの
 付き合ってるって自慢がしたいの~♪』


周囲の視線が亜弥に集まってくる。

いぶかしげに私を見る隣の女の子に、

亜弥は両手を振りながら、下を向いてしまう。


松浦のバカ~!私の正体がバレたらどうすんのよ!

MCになって、亜弥は近況を話し始める。

亜弥の方をチラっと見ながら、

「最近、私の家にタヌキが来たの~~!」

ええ~~!?と、驚きの声を上げるファン。

「そのタヌキは、なんと夜中になると、
私、松浦に化けるのよ~!」

 

化けるタヌキって、私のことだ。

 

「そのタヌキは、見分けがつかないほど、
私に化けて一緒のベッドに寝ていま~す!!」

キャアァ~~~!!と、ファンの悲鳴が上がる。


亜弥は首を振って耳をおさえる。

 

「ウソウソ~、それはヌイグルミのタヌキでした~!」

ファンの大きな笑い声が上がる。

亜弥は、また歌いだした。


『いつまでも 子供のままでいたい
今すぐに  大人だと認めさせたい~♪』


楽しそうに、ファンの声援を体いっぱいに
受けて歌う松浦を観ていると、
無性に私もステージに上がって歌いたくなる。

私も松浦亜弥として、ライブの仕事がしたい、
心からそう思う。


『私と私と私です~♪』


今、ステージで歌っているのも、私。
それを観ているのも、私。

『家族の前で  ボロボロ泣いている
 あれも私~♪ 』

松浦は、また亜弥の前にやって来て
亜弥を見つめながら歌う。

もうひとりの私・・・。

自然に亜弥も一緒に歌いだしていた。

 

歌い終わると松浦はいったん下がる。

長いファンのあややコールの後に松浦が登場して

アンコールになり、最後の曲になる。

『本当に? うん。♪』

『はしゃいじゃってよいのかな?~♪』

『うれしいよ・・・うれしいけど・・・
 好きだよ・・・みんなのことが大好きだよ~!♪』


すべて演目が終る。

「みんな~!ありがとうぉ~~!!」

亜弥は、両手を大きく振ってファンの
大きな拍手に答えながら、
私の前にやって来て、

私の前にかがみ込むと片手を差し出す。

「あや・・・美貴ちゃん!早く私の手に
つかまって!!」

NHKホールでは公演によって舞台と客席の間に二段の

段差があって舞台に上がれるのだけど、この時は

段差は無くて舞台へは高いままだった。

 

わけがわからず、つい松浦の手をつかまったら、
強く引いて亜弥を上に引っ張り上げようとする。

「みんなも手伝って~!!」

まわりの女の子達が、亜弥を一斉に下から押し上げて
ついに、亜弥はステージに押し上げられてしまう。

それを見た、整理の男性の係員が駆け寄って来る。

 しかし、何人かのファンの女の子達が、立ちふさがって
近づけないように邪魔をする。 
 松浦は、上がって来た私の肩を抱いて、

 

「みなさ~ん!この子は、私の親友の、
藤本美貴ちゃんで~す!!」

 
亜弥はその言葉に呆れて松浦を見た。
 
ファンは大歓声上げる。新曲の歌詞と振りを知って
いたのは、松浦の親友なら納得出来たようだ。
 

松浦は、もうひとりの松浦亜弥をステージの上に

上げるなんて、なんて無茶なことを・・・

あわてて帽子を深くかぶり直して松浦に耳打ちする。

「どういうつもりよ・・・」

松浦はそれには、答えず、

「みなさ~ん!!この美貴ちゃんも
 歌手なんです~! 最後に美貴ちゃんに
 一曲歌ってもらいます~!」

帰りかけていたファンが、大歓声を上げる。

 

名前:ロマンティック浮かれモード投稿日:2004/03/17(水) 19:19

亜弥は驚いて、
「なんてバカなことを言うのよ!」

「早く!フロアディレクターが来ないうちに
歌うのよ!」

「でも」

突然、歌えって言われても、

「あなたは今、藤本美貴なのよ。美貴ちゃんの
曲を歌えばいいのよ」と、マイクを渡してくる。

松浦の瞳が、いたずらっぽく輝いている。

亜弥は、覚悟を決めて歌いだす。


『ロマンティック
 恋の花咲く  浮かれモード
 史上最大の  恋が始まりそう~♪』


松浦も側で一緒に歌い、踊りだす。


『夜の9時になったら
 電話がほしいと~♪』


ファンも手拍子で答えてくれる、
ステージの亜弥を観ててくれている。

歌いながら、涙が流れ出してくる。

『恋の花咲く  浮かれモード
 悟られないように  恋が始まりそう~♪』


まるで、私の気持ちを見透かしたように、
ステージに上げて歌わしてくれた、松浦。

そして、私に声援を送り、私の歌を聴いて
くれている、ファンのみんな。


私は、歌い終わると深く頭を下げた。

松浦が、

「早く降りて!スタッフが来るよ!」

見ると何人かのスタッフが駆け寄って来る。

亜弥はあわてて下に飛び降りた。

下の女の子が抱き止めてくれる。

通路を駆け出した亜弥に、ファンのみんなが一斉に
道を開けてくれながら、私に向かって拍手を
送ってくれる。

私は、ホールを駆け抜けて、出口から外へ
飛び出した。

会場を振り返る。


とても嬉しかった。そしてとても楽しかった。

もうひとりの、松浦亜弥を一緒のステージに
上げるという、乱暴なことをした松浦。

でも、感激で胸がいっぱいになる。
もう一人の亜弥と一緒のステージは最高に楽しかった。

 

続く。

検索モー投稿日:2004/03/12(金ママは、バックからチケットを取り出した「はい、これで亜弥のコンサートを観に行き「ええ~?!どう言うことなんですか!」私はママの言葉に驚いて言「実はね、亜弥には内緒でスタッフの方から

 

宮本佳林

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