こんいろのブログ

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

さゆと萌 エピローグ 一

火事

 

萌とあゆみが歩いていると前方の空に黒い煙が
立ち上っているのが見えた。

萌はあゆみの手を引いて火事の現場に駆け付けると、
五階建てほどのビルの三、四階のベランダから
煙がもうもうと噴出している。

ビルの前で女性が半狂乱になって泣き叫んでいる。

「どうされたのですか!」
萌が聞くと女性は、

「子供が、子供がまだ中に居るんです!!」

萌が何階ですかと聞くと、四階だと言う。
萌はジャンプしようとしたが、気がついて雨樋に
手を掛けると、するすると登って行く。

「萌ちゃんー!危ないよーー!」
あゆみが叫んだが、

たちまち四階のベランダに上がり噴き出す煙を
ものともせずに中に飛び込んで行った。

その時消防車が到着して、消防士達がホースを持って
走って来る。

すでに四階のベランダからは煙とともに炎が噴き出し
始めていた。

その時、ベランダに萌の姿が見えたが、
その腕には一、二歳ぐらいの子供を抱えている。
その萌の衣服や髪の毛に火が燃え上がっていた。

萌はすぐに四階から飛び降りた。
それを見た母親の女性が悲鳴を上げる。

萌は子供をかばって地面に背中から激しく墜落した。

消防士が駆け寄ると、萌は腕を伸ばして子供を預けた。
消防士が子供を受け取ると、
萌の体の火が大きな炎となって燃え上がった。

別の消防士がホースで萌に向かって放水した。
子供も少し火傷を負っていたが母親に抱かれると、
泣き始めたので大丈夫だった。

萌の体の炎は放水で消えたが、そこには
全身黒焦げになった萌が残された。

消防士が萌の様子を見ていたが、立ち上がり
仲間に向かってダメだと、ゆっくりと首を振った。
そして萌から離れて消火活動に向かった。

萌は全身黒焦げになってピクリとも動かない。

あゆみは呆然となって座り込んだまま、萌ちゃん、
萌ちゃんと口走るばかりだった。


そしてサイレンを鳴らして救急車が来るのが見えた。

その時だった。
あゆみは萌の腕がわずかに上がるのが見えた。
その黒焦げの腕が伸びると、ゆっくりと手を振る。

まるで手招きするようにその手はひらひらと振られる。

正直、あゆみは黒焦げの萌が怖かった。
しかし、自分を手招きする萌の手に吸い寄せられるように
這いながら近寄った。

「萌ちゃん・・・・?」
すると、
「あゆみちゃん」と、萌の声が聞こえた。
「はい?」

「あゆみちゃん、私の手を取って起こしてくれない」

あゆみが手を取ると、萌は体を起こし顔が見えた。
その顔から見る見るうちに焦げた皮膚がバラバラと
落ちていき、萌の顔が戻っていた。

その時到着した救急隊員は消防士から話を聞いていた。
「子供を助けた女の子は火だるまになっていて、
全身黒焦げで心肺停止状態ですね・・・」

救急隊員はその女の子の方に向かおうとした、

すると向こうでその女の子ともう一人の女の子が
起き上がり駆け出して行くのが見えた。

救急隊員が不審に思い消防士を見て、

「なんだ、元気じゃないか」

消防士は、驚愕で目を見開いて
「そんなバカな?!あの子は黒焦げになっていて
あんなに走れるはずが無いよ!?」

走りながら、萌の体の焼け焦げていた肌がボロボロが落ちて
白い肌が見え始め、燃え尽きていた髪の毛もたちまち
伸び始めて再生していた。

身に着けていた衣服は燃え尽きたので、萌は裸だった。
それであゆみに、
「あゆみちゃん上着を貸して」と言う

あゆみは上着を脱いで萌に渡しながら首を捻った。
あゆみには、何が起きたのか到底理解し難い事だった。


さゆは麻美に電話を掛けた。

「麻美さん、今萌ちゃんは側にいるの?」

「ええ。でも私はキッチンにいるけど、萌は
少し離れた居間にいるから、電話の声は聞こえないと
思うけど」

「そうなの。麻美さん、この頃お腹が目立ち始めたの、
もう、このままの姿では萌ちゃんに会えない・・・」


続く。