こんいろのブログ

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

りんご 六

葉月 2

 

明はりんごを部屋着に着換えさせると、ソファに座らせた。

「夕ご飯は食べたの?」

明が言うと、りんごはうなずいて、

「お腹がすいてたからお弁当を買って電車の中で

食べたの」

明はワインを一本持ってくるとりんごの前に
ワイングラスを置くとピンク色のワインを注いだ。
どうぞという風に手をさし出す。

りんごはグラスと明を見比べると、
「私を酔わせる気?」

明は頭を掻いて、
「りんごも二十歳なんだからワインぐらい良いかなと。
それにワインは心身をリラックスさせる効果があるしね」

体はともかく今は心をリラックスさせる必要が
あるかもしれない。りんごはグラス取るとひと口すすった。

「甘いのね」

「このワインは甘口でアルコール度数も低いし飲みやすいよ」

りんごは、もうひと口ワインを飲んだ。
やがて頬がほのかにピンクに染まってくる。

明も自分のグラスにワインを注ぐとゆっくりと飲み干す。

りんごが切り出した。
「話して」

「あの子、葉月の事だけど最初から?」

「最初から」

「葉月と出会ったのは今から十年程前、
葉月が十二歳の時だった。
私がもっと若かったら別だけど、その頃はもう
三十歳だったから、そんなに意識はしなかったし
葉月も大人びた感じだったからね」

りんごは、
葉月は二十二歳。近くで彼女を見たわけではないけど
落ち着いた感じでもっと年上に見える。

「葉月とは何度も会う内にお互い気心が知れる仲に
なっていったし、親密な関係になるのに時間は
かからなかった。葉月は心の優しい子だったしね」

親密な関係。りんごはワインを注いでワインをひと口飲んで、

「明さんにとって葉月さんは?」

「まだ葉月と私の関係を言ってなかったね。
昔、親父と母は離婚した。原因は親父の浮気だった」

「よくある、修羅場ってわけ?」

明は笑って、
「言うほど修羅場ではなかったけどね。
母はあっさり慰謝料を貰って親父と別れた。
その後親父はその浮気相手と再婚したわけ」

りんごはうなずくと、
「そうなんだ。それで葉月さんはその浮気相手の娘さん?」
「その通り」

「じゃあ明さんと葉月さんは義理の兄妹なの?」

急にりんごは不安にかられた。確か漫画で読んだ事がある、
義理の兄妹は結婚出来るはずだ。

そのりんごの様子を見ていた明は、
「親父は何年も同じ相手と浮気していた。
その結果、葉月が生まれたわけ」

りんごは顔を上げて、
「そうすると・・・」

「そう。俺と葉月は腹違いの兄妹になる。俺達は、
血をわけた正真正銘の兄妹なんだ。
お互いひとりっ子で寂しい思いをしていた。
自分は妹が、葉月は兄が欲しかった。

歳の差があったのも良い方に作用した。
出会って十年。葉月は私を慕ってくれたし、そんな葉月が
は可愛くてたまらなかった。兄妹として過ごした時間は
短いけれど、葉月は自分にとってかけがえのない
この世で一人だけの大切な妹なんだ」

りんごは突然急激な感情が込み上げて、堪え切れずに
大粒の涙が流れ落ちた。声を上げてしゃくりあげた。

りんごのの涙を見た明は驚いて立ち上がってりんごの
側に腰を降ろすと肩を抱きながら
「りんご、どうしたの?急に泣き出したりして」

りんごは首を振りながら、
「なぜ涙が出てくるのか自分でもわからないの」

りんごはタクシーでこのマンションに着いた時、
タクシーの中で明と葉月が睦まじく連れ立って
マンションの中に入って行くを見て、

不安な気持ちに襲われて、近くの喫茶店
帰るに帰れなくて二時間も時間を費やして
居た事を話した。

明はじっと天井を見上げている。

りんごは涙をハンカチで拭くと、
「ごめんなさい。たとえ一瞬でも明さんの事を
疑ってしまった自分自身がなさけ無くて思わず
涙が出てしまった気がするの」

明はりんごを抱きしめて、
「俺が悪かったよ。りんごはどこも悪くない。
りんごの気持ちもわからずに良い気になってた
俺が馬鹿なんだ」


続く。