こんいろのブログ

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

りんご 七

葉月 3


ベッドの中でりんごは明の胸に顔を寄せてつぶやいた。

「この部屋にりんご以外の女の人が泊まった事はあるの?」

少し間を置いて明は答えた。
「・・・もちろん、無いよ」

「明さんがこれまでどんな女の人とお付き合いしたか、
りんごは気にしないよ。当然の事だもの」

明はうなずきながら、
「つき合った事のある女の子をこの部屋に泊めた事は無いよ」

明の顔をちらっと覗きながら、
「葉月さんは?」

明は、虚をつかれたようにりんごを見ると、

「葉月は妹だよ。付き合ってきた女の子達とは違う」

「泊ったのね」

「葉月が大学に通ってた頃はよくここに遊びに来てたよ。
あれは葉月が18歳ぐらいの頃かな、葉月はゲームが好きで、
二人で対戦ゲームしてて、葉月は強くてね。つい熱くなって
遅くまでやってる内に電車がなくなって、じゃあ泊まっていけよ。
となってそれから何度か泊まっていたよ」

「そうなんだ」

「その時は葉月をベッドで寝かせて、自分は居間の
ソファーで寝てたのだけど、ある時、
寒い冬の時期だったかな、葉月が一人だと怖いから
一緒の部屋で休んでくれと頼まれたんだ」

りんごはふんふんと聞いている。

「それで、葉月をベッドに寝かせて自分はその脇に
敷布団を敷いて毛布を被って寝たけど、
ちょっと寒かったな。

夜中に葉月が起き出したので目が覚めたのだけど、
お手洗いに行ったみたいだけど、帰って来たらベッドに
入らないで、俺の毛布にもぐり込んで来たんだ。
その時は寝たふりをしたけどね」

「へえぇ、可愛い事するんだぁ」

「生まれてからずっと一緒に過ごしていたら
子供の頃は一緒に眠る事もあったと思うけど、
葉月と同じ床で休むなんて初めてだったから
さすがに少し意識してしまったな。

葉月も俺の背中の方でもぞもぞしてたけど、
その内俺の背中に手を当てて寝てしまった」

りんごはその情景を思い浮かべていた。

「朝、起きたらもう葉月は先に起きていて
朝飯を作ってくれていた。
飯を食いながら、なぜベッドで寝なかったんだと
聞いたら、
あの時起きてたのー!?って口をとんがらして、
だって、寒かったんだもん。って」

りんごは笑いながら、
「カワイイ~一緒に寝ると暖かいもんね」

「あの晩はとっても寒かったしね」

「それだけかしら・・・」

明は息をつくと、
「葉月の事を女性として意識しないと言えば、
嘘になるかな。
生まれた時から兄妹として過ごしてきたらそんな事は
まったく無いと言えるのだけど。
その頃は俺は家を出て独立してたし、葉月と同居する事は
無かったしね」

「そうね」

「でも葉月は妹に違いないし、それだけの分別はある
つもりだよ。なんでそんな事を聞くの?」

「だって、葉月さんは明さんのたった一人の妹さんだもの。
とても興味があるし。なんだか葉月さんの事を聞けば
聞くほど好きになって来たの」

「よかった。誰でも葉月の事を好きになるよ」

「わたし、ひとりっ子でしょ。子供の頃はいつも
寂しい思いをしてきたの。頼りになるお兄ちゃんや、
可愛い妹が欲しかったの」

明はそっとりんごを抱きしめた。

「俺と一緒になれば、残念ながら兄にはなれないけど

葉月という妹が出来るよ。りんごより年上だけど」


続く。