こんいろのブログ

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

悪魔の悲鳴

予定したセットリストそのままにオープニングから
ゲネプロが始まった。

非公開なので会場にはメンバー以外は、フロアディレクターと
音響スタッフなど最低限の要員以外は会場にはいない。
ダンスの先生だけは客席で見ている。

会長が撮影をしたいと言ってきて、無人カメラという
事なので若菜は了解した。

そして若菜は直前に作詞作曲のつんくさんにメールをした。

「空を飛ぶ」の振りの一部を変更した事を伝えた。
「了解」との後にあるメンバーが参加出来ないという噂を
聴いた。という返信があったが、
若菜はそれはすべて解決したと伝えると、
「了解。初日を楽しみにしてる」と返信があった。

かみこは一曲目から参加していた。

ダンスは若菜とのマンツーマンの特訓の成果もあったし、
若菜の提案で同期のダンスが上手い果鈴と後ろで一緒に
踊らせる事にした。

昨日のリハでかみこと果鈴を一緒に踊らせるとうまくいったので
それで決まった。同じく同期の紗記がそれを見て、

「かみこって完コピが上手い!まるで双子みたい。
それに歌も声まで似てる。おまけに顔まで似てきた!」

若菜は笑ったけど、先生はちょっと複雑な顔。
若菜は、先生は完コピは邪道と言いたいかもしれない。
でもかみこにすれば進歩だと思った。

何曲か進み、新加入の三人のMCになった。
かみこは話が面白くて、同期の二人を笑わせる。

紗記がかみこはモノマネがうまいと言うと、
かみこはリーダー若菜のモノマネを始め出す。

それを聞いた若菜が袖から見てると、
かみこは若菜のダンスを誇張して面白おかしく
モノマネをするので、つい若菜も笑ってしまう。

ゲネプロとは言え、かみこの度胸のよさと、
エスプリの効いた会話には感心する。
明日の本番もこの調子でやって欲しい。

一時はこのツアーに参加出来なかった事を
思えば本当に良かったと若菜は思う。

いよいよ、「空を飛ぶ」前の曲になる。
スマイレージ時代のシングル「夢見る15歳」

そして新曲の「空を飛ぶ」と二曲続いて
つんくさんの曲が続く構成になっていた。

夢見る15歳を歌ってる時、異変が起こった。

まず昨夜の余震と思われる地震が起こった。
震度1ぐらいでメンバーは誰も気づかなかった。
しかし敏感なかみこは地震を感じた。同時にある音が
聞こえて来た。

それから舞台の天井から聞こえて来た。金属的な音で
キィーンキィーンキィンと何か悲しげに聴こえる。

それは「悲鳴」だった。無機質の物体から発っせられる
「悲鳴」だった。

悪魔の子供であるかみこだから感じられる「悲鳴」だった。

かみこは天井を見た。天井に吊り下げられた何台もの
スポットライトが余震で微妙に揺れている。
かみこは、その中で「悲鳴」を上げているライトを
身の内の感度を最大に上げて探した。

すぐにそれが、上手側のひとつのスポットライトだと
わかる。そのスポットライトが「悲鳴」を上げている。
かみこは下手側にいた。
そこまでの距離は十数m以上ほど離れている。

そのスポットライトの真下にいるメンバーの立位置を
瞬間的に割り出した。

真下の位置に居るのは、若菜とわかる。

そして、そのライトの「悲鳴」がキィーーーン!!
と、大きくかみこの頭の中に響き渡る。

「落ちる!」とライトは「悲鳴」を上げている。

感度を最大に上げたので、時が止まったように思える。
踊っているメンバーの動きが止まって見える。

全力で飛べば弾丸のように速く若菜の立位置に行ける。
しかしメンバーのいる中、スタッフのいる中、それは
出来ない。走るしかない。

悪魔の能力を三分の一に抑えてかみこは走った。
それでも人間の目で見れば相当な速さに見えただろう。

ここまでかみこは1秒以下で考え行動を起こしていた。

かみこが走り出した時、天井のスポットライトの「悲鳴」
が断末魔の大きさになり、

昨夜の震度5の揺れには耐えていたスポットライトは
震度1の余震に耐え切れずに約二十m上の天井から

重さ約三十キロもあるスポットライトは落下を始めた。

若菜の真上に落下して行った。