こんいろのブログ

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

アイドルは悪魔の子供 六

「虹を越えろ」の振り付けの変更が何とか完成して
後は明日のゲネプロを残すのみとなった。

ゲネプロは初日の公演の会場で、前日に行われる
事になっていた。

誉は「虹を越えろ」の作詞作曲のつんくさんに
振り付けを直前に事情があって変更する事にしたと
メールで報告した。
つんくさんは、了解。の後に妙な噂を聴いたと、
何でも新加入の新人の一人がツアーに参加出来ない
かもしれない。という噂だと送ってくる。

誉はその件について、新加入の一人がダンスの
レッスンが遅れていたが、ダンスの先生の適切な
指導と、本人の努力によって解決したと報告して、
ぜひ初日の彼女のパフォーマンスを観てください。
とメールを送る。
つんくさんは了解。初日を楽しみにしてる。と、
返信があった。

当日のゲネプロは、非公開になりスタッフは
フロアディレクターや音響スタッフなどの
限られた人員だけになる。

先生はあいこを呼んで「虹を越えろ」のあいこだけの
衣装を見せる。
「この衣装はバレエ専門店のチャコットから
取り寄せて貰ったの」
と言って純白のロングドレスを見せる。

あいこは眼を輝かせてその衣装を手に取る。
先生は、
「この衣装だと、あいこが高く飛んでメンバーを
飛び越える時、下から見上げたらすごく映えると思うな」
誉がやって来て衣装を見て、
「素敵なバレエの衣装ね~」

ゲネプロが始まる。

問題のあいこのダンスだが、誉の提案であいこの同期の
ダンスの得意な沙希と一緒に踊らせ、沙希のダンスを
完コピさせた。あいこは完璧な完コピで踊った。

「虹を越えろ」のイントロが始まり、
メンバーはあでやかな緑の衣装で登場して、前曲の
アップテンポの軽快な曲と違って、バラードの
緩やかな曲調になる。

大空の浮かぶ虹を眺めて、あの虹に向かって飛びたい。
あの虹を飛び越えて、何処までも飛んで行きたい。
そんな少女の心情を詩った歌詞だった。

あいこだけは、まだ舞台に現れていない。

やがて上手からあいこが静々と現れた。
バレエのプリマのような純白のドレスを身に着けて
サイドに向かうと、すると誉があいこに近づく。

背の高い誉はあいこの手を取り、
まるでバレエの、パ・ド・ドゥ。のように、
少しの間踊る。

この間、メンバー達は徐々にセンター集まってゆく。
そして、誉もあいこから離れてセンターへ向かう。

あいこはうつ向いていたが、さっと顔を上げて
上を見上げる。
その時、虹色の何筋ものスポットライトが点灯して
天井に向かって交差する。

あいこはソロソロと助走を始めてセンターに向かう。
足を踏み切って飛び上がる。
力強く、そして軽やかに高く飛び上がる。
立って一斉に上を見ているメンバー達の真上に飛んで
頂点に達する。

あいこは手と脚を一直線に伸ばして飛行し、
純白のドレスをなびかせている。
その様子をスポットライトが捉えている。

袖でその様子を観ていたダンスの先生は、
全身が身震いするのを感じた。
完璧だった。

リハの時よりも遥かに高く、遥かに長い距離を
あいこは飛んで見せたのだから。

下で首が痛くなるほど見上げていた誉は、
天井にぶつかるかと思うほど、高く飛ぶあいこに
深い感動を覚えると同時に、
ある不安を感じてしまっていた。

とても15歳の少女とは思えなかった。

まるで、天使か・・・悪魔のようだった。