こんいろのブログ

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

銀河の果て

「あなたは、瞬時に消されるわ」

かみこはぎゅっと唇を噛みしめて、
「私はどんな罰を受ける事になってもその覚悟を
しています。消されるという事はどうなるの
ですか・・・」

「あなたの存在がこの世から消えるという事。
同時にあなたの過去も消えて、あなたを知る人に
とってあなたの記憶がすべて消える事よ」

かみこは首を振りながら、
「私の罪はそれほど重いのですね。
では、ママは?ママはどうなるんですか!?
ママの中の私の存在が消えて、私への記憶も
消えるのですか」

アヤカは首を振って、
「たぶん、小鳩さんもあなたと同じ運命になるかも
しれないわ」

かみこの表情が険しくなり、
「なぜですか!私が罰を受けて消されるのは
仕方の無い事ですが、なぜ、ママも罰を受けるの
ですか!?」

アヤカは冷えたコーヒーをひと口飲むと、
「あなたのもう一人の母親の神子と小鳩さんには
前科があるからよ。二人は愛し合った末に、
神子は罰を受けて何百万光年離れた銀河の果てに
飛ばされたの。

その事があるから、今度の事がサターンの耳に
入れば小鳩さんの存在がある限りまた問題を
起こすとサターンは考えると思うの。

神子が問題を起こした時、
小鳩さんは人間だから、情状酌量で執行猶予という形で
許されたわけなの。

サターンは一時は小鳩さんを消すつもりだったけど、
なんとか説得するの苦労したわ」

かみこははっとなってアヤカを見て、
「大天使様がママを救って頂けたのですね。
ありがとうございます」
かみこは深々と頭を下げた。

アヤカは手を振って、
「私は何もしていないわ。ただ神子に頼まれただけよ」

そう言ってかみこを見ると、かみこの目からひと筋の涙が
流れていた。

アヤカはハンカチを取り出してかみこに渡した。
かみこはそれで涙を拭いながら、

「神子ママ。そして小鳩ママ。その二人が
愛し合って、私が生まれたのね。それもこれも
大天使様から救われた結果なのですね」

アヤカはかみこを優しく見つめながら、
「ねえ、お願いがあるの」

かみこはぱっと顔を上げて、
「お願いって何ですか!」

「その大天使様っていうのはもう止めて欲しいの」

「大天使様だから、大天使様と呼ぶのです。じゃあ
何とお呼びしたらよろしいのですか?」

「アヤカって呼んで」

かみこは瞳を丸くして首を強く振って、
「とんでも無いです!!そんな事、とても
出来ません!」

「いいじゃない。ねえ、試しに呼んでみて。
アヤカって」

かみこは頬が桃色に染まってくる。耳は真っ赤だ。
そして、

「アヤカ・・・」と呼ぶ。

「はい。何でしょう」と答えるアヤカ。

「その~私は本当に消されるのですか」

「今のところは大丈夫。サターンは現在
アンドロメダ銀河で支配者会議に出席しているから
まだ地球の事は何も知らないわ」

かみこはこの地球からのアンドロメダ銀河への
距離を計算して、
アンドロメダまでは約250万光年の距離があるから
最速の光速でも、250万年かかりますね」

「その通り。でもワープという航法手段があるから
一週間。で地球まで来るわ」

かみこはうなずいた。

アヤカは、
「だから、サターンが帰って来るまでに事を穏便に
済ませるようにすることね」

かみこは大きくうなずくと、
「はい。私は、アヤカの言う通りにどんな事で
受け入れます」

アヤカは、早速「アヤカ」と呼び始めたなと思う。
かみこは、
「たとえ、明日のツアー最終日の武道館公演にアヤカが
出るな。とおっしゃればそれに従います」

アヤカはかみこも瞳をじっと見つめて、
「かみこは、リーダーの若菜さんに明日の武道館
公演に出る。と言ったわね」

かみこはアヤカは何もかもお見通しなのだと
思いながら、
はい。と小さくうなずいた。

「武道館公演に出たい?」
かみこは小さく、はい。と答えた。

「わかったわ。武道館に出てもいいわ」
かみこの顔がぱっと輝いた。

「なんとか後はうまく行く方法を考えているの。
だから安心して」

はい!かみこはうなずいた。

「じゃあそろそろ地上に降りて帰らないと皆が
待ちくたびれているわ。あ、そうそう。その前に
見せたい物があるの」

アヤカはスマホで連絡する。
「準備は出来た?そう。こちらのスクリーンに映る?
わかったわ」

すぐにスクリーンが降りて来て、最初が映像は
乱れている。
「もう少し待って。なにしろ何百万年光年さきから
ワープ通信によって送られて来るのだから」

やがてスクリーンに人物の映像が映り始めた。


その映像を観たかみこは、立ち上がって叫んだ。

「神子ママーーーーー!!」

「あら、よくわかったわね。神子の顔を見るのは
初めてなんでしょう」

「だってだってー!いつもママが、小鳩ママが
言ってたわ。神子は、かみこに顔がそっくりだって!」

「そう。もうすぐ音声が入って来るわ」

神子の声が聞こえはじめた。

『よく見えるわ。あなたは、かみこね。
すぐにわかったわ・・・神子です』

 

「ママ、ママ・・・ママの顔がよく見えるわ。
・・・かみこです」

二人はそれだけ言うと、それからスクリーン越しに
ただただ、お互いをじっと見つめ合うだけで、
何も言わずにじっと見詰めあっているだけだった。

そんな二人を見ていると、アヤカは胸がつまって
何も言えなかった。

数分間の対面が終わりに近づくと、

最後に神子が、
『かみこ。愛してるわ』

「ママ。愛しています」

映像が消えると、かみこはアヤカに駆け寄ると、
その胸に飛び込んで力いっぱい抱きしめた。

アヤカはそんなかみこを抱きしめてその髪を
優しく撫でてやる。