こんいろのブログ

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

カーネーション

若菜は、かみこが会長室から出て行くのを見てから
すぐに会長室に飛び込んだ。

会長はデスクに肘をついてうつ向いていた。

「会長!かみこは何を言ったのですか!」

会長は顔を上げて若菜を見ると、

「かみこは・・・武道館には出られないと言った」

若菜は悲痛な顔で首を強く振ると、すぐにきびすを
返してかみこを追いかけようとしたら、

「かみこを止められるのは、若菜だけだ。
何とか説得してくれないか」

若菜はうなずくと、部屋を飛び出してかみこを追う。

かみこは追いかけて来た若菜に後ろから
抱きつかれて、

「何処にも行かないで!あなたを失いたくない!」

かみこは若菜の腕の中で体を入れ替えて見詰めると、

「わたしは何処にも行かないわ」

若菜の顔に安堵の表情が浮かんだが、
「でも会長さんが、かみこは武道館に出られないと」

かみこはそれには答えず、笑顔で、
「ねえ、用事が無かったら私の家に来ない?
家で話したい事があるから。それにママも若菜に
会いたいって言ってたし」

若菜はうなずいた。

かみこは途中で花屋に寄った。
「この前の母の日は、忙しくて遅くなったので
お花を買えなかったの」

すると若菜も同じ花を買った。

かみこはスマホで小鳩に若菜と一緒に家に帰ると
連絡を入れ、電車を降りて近くのスーパーへ寄り
言われた夕食の材料買ってから家に着いた。

若菜が出迎えた小鳩に挨拶をすると、

「いらっしゃい。私の思った通りの女の子ね」

かみこが遅れたけれど。いつもありがとう。と、
赤いカーネーションの花束を差し出した。

小鳩は嬉しそうに、
「ありがとう。愛してるわ」
かみこも、若菜の手前少しはみかみながら、
「わたしも、愛してる」

若菜はそんな、かみこと小鳩の深い絆を感じた。

若菜が、
母の日おめでとうございます。と、
ピンクのカーネーションの花束を差し出すと、

小鳩は思いがけない若菜のプレゼントに、
瞳を輝かして花束を受け取ると大喜びで、
小さい若菜に上からそのオデコにキスした。

 

若菜が少し恥ずかしそうに頬を染めていると、

かみこが笑顔で、
「わたしにはキスしてくれないの?」

すると小鳩はそれに応えて、
かみこを抱くと、その唇にキスする。

かみこと小鳩の濃厚なキスに、
若菜は瞳を丸くして見ていたが、

こんな母娘は見た事が無かったが、そのキスは
日常化してるみたいで自然な感じに見えた。

その後三人で夕食の支度に取り掛かる。
かみこが、
「ママの料理には期待出来ないけれど、若菜は
本当に料理が上手いからママも期待していいよ」
すると小鳩は、
「いつも私の作った料理を美味しそうに食べてくれて
本当にありがとうね」
と笑顔で皮肉っぽく言う。

食べながらお喋りしてる時かみこがふと、

「ママ、初日の時ママが二階席の後方で観てるのが
見えたわ。初日は予約が満席みたいでよくチケットが
取れたわね?」

「あら、よくわかったわね。どうしても初日のかみこの
ジャンプを見たかったから、悪いけどかみこのスマホ
ハロプロ。とある履歴の番号に掛けたら男の人が出たから
かみこの母親と告げて初日のチケットを手配出来ないかと
頼んだの。
確か山崎さんと言ってたわ。内緒にしたいので無断で
あなたのスマホの履歴を見たのはごめんなさい」

「そう。大丈夫気にしないで。その人は会長さんね」

楽しかった夕食が終わり、その後母娘が声を
かけ合っていそいそと一緒にお風呂に入るために
浴室に入って行くのも、もはや違和感が全く無い。

そんな母娘は若菜は、
まるで恋人同士だと感じがして来た。
それを隠そうともしない二人も自然に見える。

その後小鳩が、若菜のために客間の支度をしようかと
声かけると、かみこは首を振って大丈夫、若菜は
自分の部屋で休むから。と答える。

その言葉に小鳩は少し寂しそうな表情をしたので、
若菜は二人はいつも一緒の部屋で、同じベッドで休む
のだろうと思った。
かみこが若菜を無視して今夜は家に若菜がお泊りすると
決まったのは致し方ないと思う。

そして若菜は、かみこの部屋に下がり落ち着いた。
かみこが部屋を外した時、若菜はスマホで自分の家に今夜は

メンバーの家に泊まると連絡を入れる。

かみこが鏡台の前に座り、濡れた髪をドライヤーで
乾かしてながら、何気ない口ぶりで、

「家に来る前、若菜が私の事を『失いたくない』
って言ったのは、アンジュルムのリーダーとして
アンジュルムのために失いたくないと言ったのかしら」

若菜はしばらく考えていたが、立ち上がり
鏡台の前のかみこの後ろに座ると、鏡台越しに
見詰合いながら言った。

「リーダーとしてでは無く、自分自身のために
松本若菜としてかみこを『失いたくない』と言ったの」

かみこはうなずいて、
「わたしも同じ気持ちよ。自分自身のために、
福田かみことして若菜の事を『失いたくない』と
想っているの」

若菜はその言葉に面映ゆい表情になる。

かみこは続いて、
「たとえ、アンジュルムを離れる事になっても
その想いは変わらないわ」

その言葉に若菜は悲しそうに顔をゆがめた。