こんいろのブログ

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

パジャマ

「たとえ、アンジュルムを離れる事になっても
その想いは変わらないわ」
その言葉に若菜は悲しそうに顔をゆがめた。

若菜は、
「私はアンジュルムのリーダーよ。リーダーとして
言わして貰えれば、かみこは失う事になれば、
アンジュルムとして重大な損失になるわ。

パフォーマンスはもちろんの事だけど、人としての
かみこを私は尊敬しているわ。加入してまだ半年しか
立ってないけど、かみこはメンバー達の内面を
心身共にわかるみたい。同期の紗記が言っていたわ。

『かみこは私達が悩んだり、身体の不調をすぐにわかって
それとなくアドバイスしてくれるの。立ち位置が覚えられない、
お腹が痛くてしかたがない。そんな時的確なアドバイス
してくれるの』って。

私は十年在籍しているの。卒業はすぐ目の前よ。
早く次のリーダーに後をまかしたいの。
かみこは、リーダーに適格だと思うわ。
お願いだから、まだ辞めないで欲しいの」

かみこは首を振って、
「私は加入してまだ半年よ。それにまだ15歳よ」

「在籍期間や年齢は関係ないわ。リーダーとしての
素質、人柄こそが大事だと思うわ」

かみこは首を振るばかりで、そして、
「若菜は、中世ヨーロッパの魔女狩りを知っている?」

「聞いた事はあるけど、よく知らないわ」

「15世紀から17世紀にかけて魔女狩りの嵐が吹き荒れて
莫大な数の女性達が宗教裁判にかけられて、その犠牲者は
数十万、数百万とも言われてるわ。そのすべては、
無知と偏見と偏った恐怖のせいで処刑されたのよ」

若菜は身体を震わしながら、
「かみこは魔女なんかでは、絶対に無いわ!」

かみこは心の内で、
私は似たような物なの。悪魔の子供なのだから。

今はファンはかみこのパフォーマンスに驚いているだけだが、
時間が立てば次第に奇異の目で見るようになり、
かみこの事を、人間とは思えない。化け物扱いをするように
なるのは目に見えている。

自分だけが化け物扱いされのはまだいい。しかし母親の
小鳩までがその犠牲になりかねないのをかみこは恐れていた。

若菜はかみこの手を取って、
「お願い!お願いだから、せめて武道館までは辞めないで
欲しいの。後の事はそれから考えればいいじゃない」

かみこはしばらく若菜の手を握り締めていたが、

「わかったわ。大好きな若菜のために武道館まで
辞めない事にするわ」

若菜の顔がぱっと輝いて、
「ありがとう!かみこ、大好きよ!」

二人は遅くなったので休むことになった。
かみこは自分のパジャマを若菜に貸してあげる。

かみこは160以上あるので145の若菜には少し
大きすぎたが、若菜の手が袖口の中に隠れてしまうのが
ものすごく可愛く見えて、思わずぎゅっと抱きしめる。

若菜は安心したのか、かみこにぴったりと体を寄せて
すやすやとやすらかに寝ていた。

かみこは小鳩と、翌朝帰って行く若菜に手を振って
見送りながら、

「ママ。ママには絶対に辛い思いをさせないわ」

小鳩はかみこをじっと見詰めながら、
「ありがとう。あのね、実は大天使アヤカさんに
相談したの。それで今度かみこに会ってくれるそうよ。
アヤカさんはもちろん、今のかみこの事はすべて
見ているし事情もすべて知っているから、大丈夫よ。

それで今夜私達とあちらの家族と一緒に夕食に招待
してくれたの」

「あちらの家族というのは?」

「もちろん、アヤカさんと結婚した憂佳さんに
その子供の薫さんの事よ」

かみこは瞳を輝かせた。大天使アヤカにまた会える。

「以前、かみこが見たという、天空から一筋の
後光が一直線に差していたあのビルの中の
レストランで食事をする事になったの」